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二人乗り

風を感じる。

暑い夏だけど、この瞬間は堪らなく好きだ。

「そろそろ交代しろよッ!」
「やだッ」

誰ひとりといない田んぼ道をチャリで2ケツする。
青い稲穂に心地いい風、蝉の声に片手にアイス。
コレ最高じゃん?
「そりゃ快斗は楽しいだろーよッ!こっちはめちゃくちゃ疲れるってぇの!」
「じゃんけん負けたの誰だっけ?」
わざと抱きついてみたら、汗と洗剤の匂いがした。
こんなことも平気でできるのは友達の特権。
だから友達ポディションから抜け出せないでいる。
そんなことを考えたら妙に意識をしてしまって、ドキドキした。
ひとりドキドキしてるのが悔しくて、新一の口へ溶けかけのアイスを無理矢理押し込むと、
冷てーよッと怒鳴ってオレを睨んだ。

5.「よけい惨めになるじゃん」(快→新)

片思いな台詞でお題01@大学生設定
第5話(第3話の続き)
※新一視点


夏の暑い教室の中で、遠くから蝉が五月蠅く鳴いているのが響く。
オレの激しく鳴る心臓の音まで掻き消えるぐらい、やかましく鳴いてくれればいいのに。
「もう…いいよ。よけい惨めになるじゃん」
快斗の低い声が静かに響いた。
「…わかった。この教室を出たら昔の関係に戻る。これまでのことはなかったことにしてくれ。新一の望み通りに」
顔を上げられない。
今あの冷たくて何も映さない無表情な笑顔が怖い。
がたん、と立ち上がる音がして、思わず顔を上げた。
このままではどんどん快斗が知らない人になっていくようで。
「……逃げるのか?」
快斗は目を細めて、見下すようにオレを眺めるとあのとき屋上で出会ったキッドの顔で微笑った。
「むしろ近付こうとシテマスケド?」

鼻先でぱたん、と扉を閉められた。


このとき嫌だと言えばよかったんだろうか。
この気持ちはなんなのだろう。

絶望感だけをひしひしと感じながら、クシャクシャになったシャツから数本しか入っていない煙草の箱を取り出して肺の奥深くまで煙に侵される感覚を、ひとり残された誰もいない教室中で味わっていた。
ただただ蝉の鳴く声が聞こえるだけの教室で。

4.「無防備すぎだって」(快→新)

片思いな台詞でお題01@大学生設定
第4話
※新一視点


今日も快斗の姿を見かけた。
授業中に眺めた窓の外。
大きな木の下で、携帯を片手にヘッドホンをしてベンチで寝転んでいる姿が見えた。
アイツが何を考えているのかわからない。
大学に入ってからというもの、避け続けられている。



そもそも、快斗は人の話を聞かない。
自信過剰。
の、割りにいざって時に小心者。
大体なんだってんだ。

勝手に告白して、
勝手に謝って。
勝手に逃げて、
勝手に自己完結。

考える暇も与えられなかった。
だから考えないようにしてた。
がむしゃらに仕事引き受けて、受験勉強にも励んで。
快斗が同じ大学を受けるってことは知っていた。
初めからこの大学を受けることは快斗より先に決めていたんだし、別に気兼ねすることなんてないだろ。
馬鹿馬鹿しい。
イライラしている自分が腹に立つ。

他人だと思えないほどよく似ていると言われるほどオレたちは本当に仲がよかったんだ。



初めて会ったのは、きっと快斗は覚えてないんだろうけど真夜中のビルの屋上だった。
その日は、怪盗キッドが予告状を送りつけた夜で。
オレは大して興味もない著名人が集まる、つまらないパーティをこっそり抜け出して屋上に忍び込んでいるとき。
しばらくは高校生探偵として、名を広めて調子に乗ってた。
好きなことをして、夢へと着実に近づく。
何でもできそうな気がしてた。
だが、現実はそんなに甘くない。
自分を見失いかけていた。今のままでは何者にもなれない気がする。
掴んだものが砂のようにさらさらと掌から零れ落ちていく、そんな感覚。
いつの間にか煙草を口にするようになって、よく空を見上げるようになっていた。
しばらく手すりに身体を預けて煙草を吸っていると、誰もいないと思っていた屋上で声がした。
「・・・オレ、こっから飛ぶよ。・・・・大丈夫・・・・うん、わかってるって・・・」
自殺?
誰かに電話してんのかな?
姿は見えない。どうやら反対側にいるようだ。
会話が途絶えると、ばさ、と布の擦れる音がした。
落ちたか?
煙草を投げ捨て、走って手すりから身を乗り出したオレは白い羽に手が触れた。
「・・・え?」
ごおっと風が唸ると、その羽はうまく風を掴み、全身白で覆った彼は、オレを一瞥して自信満々な顔で笑ってやがった。
なんて嫌味なヤツだ、せっかく心配してやったのに。
それが第一印象。

そして公園で再会した。
最初は気づかなかったけど、マジックをして客が喜ぶ姿を見ながら満足気に笑う顔でもしかして、と思った。
警察に繋がっているオレはきっとアイツを突き出さなくてはいけないのだろうけれど、アイツと一緒にいることが楽しすぎて、本人に確かめることも話題にすることもなかった。


高校時代は楽しかったな・・・
そんなことを思いながら、授業後に木のそばを通ると携帯を芝生の上に落とし、財布も半分ポケットからずり落ちそうな状態で快斗がまだそこにいた。
オメー本当に怪盗キッドなのか?
泥棒の癖に泥棒されっぞ。
「ん・・・」
携帯を拾ってズボンのポケットに入れてやると、快斗がぱちりと目を覚ました。
「え、あれ、・・・何?え?」
オレを見て動揺を隠し切れないらしい。
「無防備すぎだって・・・」
すると快斗はふわりと笑って
「ありがと、新一」
って言いやがったッ!
完全に作られた微笑。これが、怪盗キッドのポーカーフェイスか。
無償に腹が立って、その瞬間本気で警察に通報しようと思った。
悔しくて、
悲しくて、
やっぱり通報しきらない自分がいて、
こんなんになるんなら、なんで告白なんかオレにしたんだ、と快斗に問いただしたくて堪らなかった。


配布元*riko様
ハニィラブソング

3.「そんな顔見せんなよ・・・」(快→新)

片思いな台詞でお題01@大学生設定
第3話


これは拷問だ。


「なぁ、快斗。・・・どう思う?」

何故今新一が目の前にいるのだろう。
ここは食堂で、オレは服部と昼食を共にしていたはずなのに。
新一が目の前に座っている。
ちょっと上目遣いで、首をかしげ蒼い瞳でまっすぐオレを見てる。
まっすぐ心まで見透かされそうなその瞳。
視線を合わすことは、今のオレには到底できない。
思いを告げて玉砕した今もなお持ち続けている邪な思いがバレてしまいそうで。
しかも日本は夏で、夏であるからして、当然服装は露出が多いワケで・・・
つまり、浮き出てる鎖骨とか、細い首とか、白い腕とか完全に無防備で、



これを拷問と言わずして何と言う?



それ以前に、なんでオレに平然と友達面して話しかけられんだよ。
オレ、オマエのこと好きってゆったじゃん。
もう友達なんかに戻れないだろ。
正直オレのこと、キモチワルイとか思ってるはずなのに、
なんで普通に話しかけんだよ。
ああ、ダメだ。
これ以上接していたら諦められなくなってしまう。
「えと、ごめん。オレ、次授業だからそろそろ行かないと・・・」
「なんで?」
「は?」
「なんで授業に行くんだよ」
それは、単位を貰って無事卒業したいから、という言葉を言おうと顔を上げた途端そんな台詞はすぐに忘れてしまった。
蒼い目を伏せて長い睫が影を作っているのがわかる。
新一は目の周りをほんのり赤く染めて、飲み終わった紙パックジュースをくしゃっとつぶした。
「快斗、オレのこと絶対避けてる」
アタリマエだろーが。
ちゃんと友達として接する心の準備なんてまだできてねぇもん。
柄にも無くうろたえている新一を見て、イライラしてきた。
なんでこんなヤツを好きになったんだろう。
オレの中で、ぷちんと何かが切れた音がした。
「・・・ちょっと来い」
授業始まりまであと数分。
パラパラと人が去っていく食堂に食べ終わった食器と、
新一がつぶしたジュースの紙パックを残して細い手首を強引に掴んだ。


このときオレは何にも考えていなかった。
今新一はどんな気持ちなのか。
どんな顔をしているのか。



来月から改修工事予定の誰もいない棟で、鍵が壊れている教室の扉を乱暴に開ける。
快斗はくるりと振り返って、新一を見つめた。
「変な期待持たせるからこうなるんだよ」
オレ、何しようとしてる?
こんな強引なやり方、オレらしくない。
そんな思考とは裏腹に、掴んでいた手首を一層強く握って壁に叩き付けた。
「痛ッ」
新一のあごに手を添えて上を向かせると、本能のまま舌をねじ込んだ。
「ん、んッ・・・」
こんなのキスじゃない、噛み付いているようだ。
唾液が二人の間を行き来しているのを感じる。
「ん・・・はッあ・・・も、やめろ!」
身体を強く押されて、近くにあった机にぶつかって大きな音を立てた。
口の中が血の味がする。
好きとか嫌いとか、どうでもいい気持ちになった。
「・・・もうなんでもいい。オマエ犯すから」
煽るようにぺろ、と舌を出した。
ここまでやって、自分への軽蔑の眼差しをこんなにも近くで見据える勇気はなかった。
とことん、自分はずるい人間だ。
人に愛を求めるくせに、逃げてばかりだ。
不意に強張っていた新一の身体から力が抜け、その場に座り込んで膝に顔を埋めた。
「そんな顔見せんなよ・・・」
ぽつりと呟く新一の声は震えていて、熱が篭っている教室の中でじっとりと流れる汗を感じながら、オレは一体どんな顔をしているのだろうとぼんやり考えていた。



配布元*riko様
ハニィラブソング

2.「俺と居る時と全然違うんだな。」(快→新)

片思いな台詞でお題01@大学生設定
第2話



大学に入学してから1ヶ月が過ぎた。
あんなに行く気のなかった大学へ意外と毎日ちゃんと授業に出ている自分にびっくりだ。
新しいダチもできたし、新しい生活が始まって物珍しいものが溢れているからかもしれない。
そのひとつに関西出身の陽気なダチ、服部。コイツはかなり面白い。てか、関西出身のダチなんて今までいなかったから楽し過ぎる。まあ、関西弁でやかましいヤツだからうっとうしがる奴等もいるようだけど。

「よお!黒羽!」
今日もオレの背中をいきなり叩いて豪快に登場。
「オマエ毎回痛ぇよ!ちったぁ手加減しろよ〜」
「悪い悪い。てか二限何とってん?」
悪いてちっとも思ってないなコイツ。
「哲学概論」
「ばり暇そうやんか!」
「そうなんだよな〜じいちゃん先生でさぁ」
「今日はもうさぼってどっか遊びに行かへん?どぅせ二限までやろ?」
さぼろうかな、と言いかけてオレは必至に飲み込んだ。
「や、やめとくな。出席、厳しいからさ…」
そうなんや、と言ってる服部の声が遠くに聞こえる。
ヤバイ…早くここから離れなきゃ、と繰り返し頭の中で言葉がぐるぐる回っている。
気付かれる前に早く、と思えば思うほど足が動かない。
「あれ…工藤新一やんか!ほんまもんや〜!」
ばか!声でかい!と快斗が言うよりも早く今会いたくない人ランキング1位の工藤新一とばっちり目が合ってしまった。
「わり、じゃ!」
不思議そうな顔をした服部をひとり残したまま、弾かれたように猛ダッシュで逃げた。



「ヤバイ…オレ怪し過ぎだろ」
息を切らしながら壁に寄り掛かると、ズルズルとしゃがみ込んだ。
「バカみてー」
たかが男にフラれただけでこんなにも未練たらしく避け続けるなんて。
「…ほんとバカだな。オレ」
なぜかばっちり二人の様子が見える校舎裏にいた。二人は自分が見ていることに気付いてないようだ。
自分から逃げたくせに、遠くから覗き見るなんて趣味が悪い。
なんだか仲良くなったみたいだ。服部は誰とでも仲良くできるし、なんてったって、新一と同業者だ。名前ぐらい知ってたっておかしくない。
何か服部が面白いことでも言ったのだろうか。
背中をばしばし叩きながら笑いあっている。
胸がすぎん、と痛んだ。
新一とオレは周りから見ても兄弟のように仲がいいと少なくともオレは思っていたけれど、あんな風に笑いあったことは無かったかもしれない。



「俺と居る時と全然違うんだな……嫉妬かな、コレ」
思わず呟くと、益々胸が苦しくなった。




配布元*riko様
ハニィラブソング
プロフィール

Author:ひよか
当サイトは非公式BL傾向二次創作小説となっております。
主に名探偵コナン(快新)とヒカルの碁(ヒカアキ)です。
ひよか自身の趣味により構成されている為、当サイト扱い作品関係者様とは一切関係ありません。
また、年齢・性別制限は致してませんので自己責任にて閲覧してください。
気分を害されたとしても責任を負いかねます。もし、著作権等で何か問題が発生した場合速やかに撤去します。

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リンクフリーです。
人魚ひめ

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